最近の白書では、英国のネット・ゼロへの移行と2030年の野望の達成には水素が不可欠であり、今後数年間で大幅なスケールアップを図ることが強調されている。英国が水素のグローバル・リーダーになるには？
パンデミックの後、英国は「より良いものを作り直す」機会に焦点を当てることが不可欠であり、このことから、水素を含むエネルギーと低炭素技術への投資を促進する政府の「10ヵ条計画」が発表された。
ウエストウッド・グローバル・エナジー・グループの ホワイトペーパー は、水素が英国市場で成功するための重要な要因を探った。英国市場で水素が成功するための3つの重要な要因、すなわち政府の支援、コスト削減、需要と供給について概説した。
グリーン水素が天然ガスと競争できるようになるには？
10GWの目標を達成するため、英国政府は水素戦略において、低炭素水素の製造と利用にインセンティブを与える2つの重要な施策、ネット・ゼロ水素基金（NZHF）と水素ビジネスモデル（HBM）を導入した。
NZHFは、低炭素水素製造への投資リスクを軽減し、生涯コストを削減することを目的としている。NZHFは2億4,000万ポンドの助成金を提供し、開発の初期費用と資本支出に充てる。
HBMは、差金決済契約（CfD）メカニズムを通じて事業者に継続的な収益支援を提供するが、これは大規模な再生可能エネルギー・プロジェクトの開発支援に成功してきた実績がある。
2025年末までに250MWのグリーン水素製造の稼働を支援するため、最初の共同割当「2022 HBM/NZHF電解割当ラウンド」が2022年7月から10月にかけて実施された。成功したプロジェクトのショートリストは2023年初めに発表される予定で、第2ラウンドは2023年夏に予定され、2024年に契約が締結される。
政府の支援は、他の代替品に比べて水素のコストが高いことに対処することを目的としている。これは、ロシアのウクライナ侵攻によるエネルギー価格の上昇によって必要とされている。
これにより、一時的に グリーン水素 しかし、その後、天然ガス価格は侵攻前の水準まで大幅に下落し、グリーン水素の競争力は再び低下した。
水素の規模が拡大し、コストが低下するまでは、低炭素のブルー水素やグリーン水素の競争力を高めるためには、政府の支援が重要になる。
より安全なエネルギーシステム構築における水素の役割
現在、英国はブルーとグリーン両方の水素製造を支援するツイントラック・アプローチをとっている。
白書は、シェルが英国におけるブルー水素プロジェクトの開発で最大の参加者であることを明らかにした：「Vertex水素（EssarとProgressive Energyの合弁会社）は、Hynetプロジェクトを通じて330万kWを開発している。
英国で提案されているブルー水素プロジェクトはすべて沿岸部にあり、必要な天然ガス供給と炭素貯蔵へのアクセスが容易である。
英国最大のグリーン水素プロジェクトは、オーステッド社、フィリップス66社、ITMパワー社、エレメント・エナジー社が主導する、英国を代表するグリーン水素プロジェクト、ギガスタック（Gigastack）である。
サウス・キリングホルムに位置するこの571MWのプロジェクトは、世界最大の発電所であるホーンシー・ツーからの再生可能な電力を利用した大規模なグリーン水素製造の実証を目指している。 オフショア 風力発電所
フィリップス66はこの水素をハンバー製油所の燃料ガスとして引き取り、ITMパワーは実証用に5MWの電気分解機を供給する。
続けて白書は、英国のエネルギーミックスとインフラが進化するにつれて、水素の貯蔵はより安全なエネルギーシステムを構築する上で重要な役割を果たすことができると説明した：「水素は、再生可能エネルギーの断続性のバランスをとり、抑制されていたはずの電力から価値を生み出すことができる」。
英国はどのようにして適切なインフラを確保できるのか？
英国の地層は、水素の貯蔵に利用できるという大きな利点がある。英国には、塩の洞窟と枯渇した石油・ガスの貯留層という2つの主な地層がある。
IEAによれば、枯渇した石油・ガス貯留層よりも塩の洞窟の方が優れているため、水素貯蔵のための塩の洞窟の需要は、貯留層よりも先に立ち上がることが予想される。
現在、水素貯蔵に利用されている世界4カ所の塩の洞窟のうちの1つが、英国のティーサイドにある。このサイトには25GWhの容量がある。しかし、現在天然ガス用に使われている塩の洞窟を、さらに水素貯蔵用に転用できる可能性がある。
英国が水素の世界的リーダーになるもうひとつの方法は、適切なインフラを確保することである。水素は、コストのかかる圧縮や液化が必要なため、長距離輸送が困難である。
コスト削減のため、水素プロジェクトは需要の中心地に近い場所に建設されている。これは、供給と需要を結びつける最も簡単な方法である。 パイプラインシステム 多くのビジネスが近接している。
白書は、確立されたパイプラインシステムが重要である理由を次のように表現している。"パイプライン、特に再利用されたパイプラインは、当面の間、最も安価な輸送手段を提供する"。
既存のガスパイプラインを水素用に再利用することは、新規に建設するよりも最大5倍も費用対効果が高い（National Gas, 2022）。(ナショナルガス、2022年）。
最終的には、需要が供給からさらに遠ざかり、より広範なパイプライン配給ネットワークが必要となる。プロジェクト・ユニオンは、これを達成することを目的とした英国におけるプロジェクトのひとつである。
プロジェクト・ユニオンは、ナショナル・ガスが主導する英国最大の水素パイプライン・プロジェクトである。このプロジェクトは、2,000kmのパイプライン（英国の天然ガス送電パイプラインの25％）を水素に再利用することで、英国の水素バックボーンを構築することを目的としている。
2027年から段階的に実施され、2030年代初頭までに最初のバックボーンが完成する予定で、当初は東海岸の産業クラスターであるティーサイドとハンバーを結ぶ。
白書が強調しているように、英国は高い競争力を持ち、成功する水素経済を創造するリーダーになることができる。リスクと課題はまだ顕著であるが、投資を確保するためにこれらを軽減することは可能であり、政府の政策が極めて重要になる。
